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京都国立近代美術館で開催中の「パウル・クレー展 おわらないアトリエ」(Art in the Making 1883-1940)に行ってきました。
が、展覧会の感想は次回以降に譲って、今回はパウル・クレーの作品の中でも、最も日本人好みな「天使シリーズ」について少し書いてみます。 ...が、まずは唐突に、私にはそれらが他人とは思えない二つの天使の画像を並べてみたいと思います。 第3使徒:サキエル(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より) 「武装した天使(一部)」/パウル・クレー 詩や絵本の挿絵にも使われる愛らしいクレーの天使たちを愛する方には、「グロテスクで意味不明なものと一緒にするな。」とお叱りを受けそうですが、意味不明で何者か分からないというのは本質のひとつで、例えば、宮下誠著「越境する天使 パウル・クレー」の中で著者は、可愛いもの好きとして作品の表象を愛好する人々のクレー受容のスタンスを、真っ向から否定することに大きく論点を置いています。 「クレーの2つの眼差しは、片方で、混迷を極めてゆく世界を、或いはいよいよ生き辛くなってゆく世界を、悪意に満ちた眼差しで見つめながら、もう一方の眼差しで、森羅万象の不思議を見詰め、考察し、深い哲学的な思想で再解釈し、イメージとして残そうとした。 クレーの絵画世界は、その記録である。 」(本文抜粋) 「天使、まだ手探りの」 下に引用した画像は、特にそういう傾向の人気が高い、エンピツ画の天使たちの一部、向かって左から「未熟な天使」と「天使というよりむしろ鳥」。これらのタイトルが象徴するのは、「不完全」で「途中」とでも言うべき、なんとも実に中途半端な個性として描かれています。 このように「ちゃんとしたもの」に成りきれない異形のものたちは、他にも「天使、まだ女性的な」や「天使候補」などといった数多くのタイトルに見ることができます。 天使候補ってなんやねん...という話ですが、再び先の書籍から、クレーの言葉を引用します。 「此岸でわたしを捕まえることはできない。わたしは好んで死者たちと、未だ生まれざるものとの領域に住みついているから。」 この言葉は、クレー自身のみならず、必然的に自身の作品に投影された「ちゃんとしていない」ものたちの性質にもそのまま当て嵌まることになります。先の著者はこうしたものたちを「中間領域」の住人として、不完全な天使を始め、クレー作品全般の主要モチーフであることを指摘しています。 そんなクレーの作品に登場する"ワケの分からないもの"の中でも、天使というのは、そもそもがスタンダードな完成体であったとしても、「聖」と「俗」を行き来する使いっぱしりであり、その「存在位置」も「性」も"どっちつかず"なわけですが、さらにその上に「XXXな天使」などと、変容途中で不完全な状態を張り付けられてしまうのは、まさしくキング・オブ・チュウトハンパとでも呼びたくなるわけで、そんな天使シリーズはクレーの真骨頂と言える気がします。 さて、第3新東京市地下のNERV本部に幽閉された徒アダム(リリス)との融合を目的に襲来する謎の生命体、使徒。その名のとおり、いちおう天使ということにしてしまってよいであろう彼らは、いつも目的達成の寸前にエヴァンゲリヲンによって駆逐されるわけですが、エロティックでさえある彼らの造形のユニークさもまた、変容途中の意図的な中途半端さが際立って魅力的だと感じるのはおそらく私だけではないと思います。 クレーの天使のような見た目の愛らしさこそ薄いかもしれないけれど、どこか不完全で「中間領域」の住人である使徒たち、特に浅間山の火口で卵状態で発見されてしまう第8使徒サンダルフォンの中途半端でちゃんとしていない感じなどは涙ぐましいものがあります。 「残酷な天使のテーゼ」の「残酷」は、「天使」にかかっているのか「テーゼ」にかかっているのか考えながら、もしかしたらクレーの天使にインスパイアされているかもしれない使徒のビジュアル(...これ、普通に既知公然の事実だったりしたらごめんなさい...)を想像して、とにかく一度その外観を並べて見ようと思い立ったのが最初に引用した第3使徒とクレーの天使シリーズより「武装した天使」だったのですが、あくまで個人的には、やっぱり想像どおりドンピシャな感じがします。 私がエヴァンゲリヲンというアニメーションに惹かれる大きな要因が、いちおうの敵と言える使徒のビジュアルにあったのは事実で、そこには、クレーが描く「わけのわからないもの」たちを見て、笑ったり癒されたりしていいのか、戦いたり絶望したりするべきなのかが分からない感じ、「それに気づいた途端、秩序維持が困難になるもの」(同著)に戸惑いつつ魅了される感触に、根底では繋がっているのだろうと思います。 上の例の「武装した天使」という題名はあまりにも出来すぎですが、別に武装していなくても、もっと言えば主題が天使でなくても、クレーの作品の中に使徒のモチーフとなる描写をたくさん見つけられるだろう......... ということで、いくつか抜粋してみたいと思います。 第6使徒:ガギエル (深海魚みたいなやつ) 第12使徒:レリエル (影を落とす空と飛ぶ球形みたいなの) 第14使徒:ゼルエル (ずんぐり体系で腕が折りたたみ式のやたら強いやつ) 第5使徒:ラミエル (ヤシマ作戦の正八面体のやつ) 第7使徒:イスラフェル (2体分裂式のハンガーみたいなの) 第4使徒:シャムシエル (腕が鞭になってるイカみたなやつ) 第9使徒:マトリエル (足長グモみたなの).....この際、第10使徒:サクィエル (衛星軌道上から落下してくるでっかい目)でも可。 正直、単なる思いつきで漁ってしまいました...。さすがに無理があるし、そもそもそんなものならピカソやルドンからでも、また適当な抽象画の一部をそれっぽく抜粋するだけでも、それなりに名前を当て嵌められるだろう、と自分でツッコミを入れそうになるのを飲み込んで、..... ......それでも懲りずに、最後に、 ATフィールド! (赤いけど...)
by hychk126
| 2011-04-13 00:31
| 芸術
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Comments(2)
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通りすがり
at 2011-07-03 03:47
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本日、パウル・クレー展に行って参りました。
私と同じように、エヴァの使徒を思い浮かべた方がいらっしゃったとは・・・!感激です 公式でデザインを参考にしたかどうかについてのコメントはないようなのですが、 やはりどことなく似てますよね・・・ 個人的には、作品『異人たちの一座』が使徒に似てるなと感じました。 通りすがりにすみません。。思わずコメントさせて頂きました!
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hychk126 at 2011-07-03 23:45
同じように感じられる方がいて少し安心しました。
実際は使徒のデザインへの影響で言えば、やっぱり一般に言われるように太陽の塔に代表される横尾忠則になるのでしょうが、では間接的に横尾とクレーの関係で言うと、私はあまり詳しくないですが、おそらくそちらも顕著な影響とかはないのでしょうね。いずれにしても、天使の造形において結果が接近することをそれほど不思議に感じる必要はないのかもしれませんね。 『異人たちの一座』、観る者をフリーズさせますよね。あれを「素晴らしい」と言える感性なんて持ち合わせてないし、どうリアクションしていいのか分からないという...(笑)。
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